佐藤さんの造る漆器は『自然に優しく、人にも優しい漆器』を第一に考えて制作されます。
「毎日使うものだから体にいいものを使って欲しい」という思いから、塗料などを一切使わず"漆のみ"を使用して器を制作。漆器の補強や修理には、朱色のベンガラを使用します。
ベンガラは鉄のサビ色が原料。鮮やかな色にはならないものの、健康に問題のないベンガラを使用することが佐藤さんのこだわりです。
漆器の原材料にはトチの木を使用。軽くて柔らかみがあり、肌さわりの良い木材です。このトチの木に、何度も漆を薄く塗り重ねる『拭き漆』という技法を用いて漆器作りを行います。
トチの木は表面が柔らかいため漆が染み込みやすく、木と表面と漆が一体となるため、汚れに強く長持ちする器になります。
「漆器はきちんと手入れをすることで、より長く使えるようになります。」と語る佐藤さん。
柔らかい漆器は、硬いガラス食器や陶器と一緒に洗うことで傷がついてしまうため、他の食器類と分けて洗う必要があります。
洗剤を使わず柔らかい布やスポンジで表面を洗い、ぬるま湯ですすぐだけで汚れは充分に落ちるとのこと。しつこい油汚れは、熱めのお湯で洗い流すことができるそうです。
洗い終えた漆器は、柔らかい布で軽く乾拭きを。このひと手間を加えることで、漆独特の光沢を維持しながら、艶の増した美しい漆器を保つことができるのです。
木のスプーンは、実際に使ってみて自分が最も使いやすいものデザイン。
口に入れる皿の部分は、手前は浅く、奥に行くほど深くなるよう設計されていて、口に入れやすい形に仕上がっています。
柄は、手に触れる中央部分を握りやすいよう細目に削り、柄の先は太くなるように設計。この形にすることで、手に持った時に皿と柄のバランスが取れ、安定して料理を口に運ぶことができます。
佐藤さんは、陶來の大沢さんと共にユニバーサルデザインの食器を制作する「てまるプロジェクト」に参加。
"家族みんなで使いたくなる食器"をコンセプトに、介護者が使いやすいデザインのスプーンを作成。2010年には『岩手県ひとにやさしいまちづくり表彰』を受賞。2011年にはグッドデザイン賞を受賞しました。
漆器は出産や結婚式などのお祝いの際に贈られる事も多く、長年使い続けることができる記念品として愛されています。
東北巧芸舎では、思い入れのこもった漆器を長く使い続けて欲しいという思いから、器への名入れや漆器の修理、漆の塗り直しなどを行なっています。ご希望の方はお気軽にお問い合わせ下さい。