滝沢市の岩手山麓地域には多くの工芸家が集まり、たくさんの工房が立ち並んでいます。陶來の大沢和義さんも滝沢市で創作活動を続けている工芸家の一人。その大沢さんが代表を務めているのが2008年からスタートした「てまるプロジェクト」です。現在では東北巧芸舎(滝沢市)・佐藤勲さん、佐賀工芸(洋野町)・佐賀義之さん、八幡平市の浅野奈生さん、企画・運営担当の金沢景子さん、歌代幾世子さんの七名で活動しています。
ユニバーサルデザインを追及した「てまるプロジェクト」は2010年に『岩手県ひとにやさしいまちづくり表彰』、2011年にはグッドデザイン賞を受賞しました。県内だけではなく全国の展示会へ出展することも多く、この取り組みは各地で反響を呼んでいます。子どもや高齢者、障がい者問わずに誰でも使いやすい食器作りに取り組んでいるのが「てまる」です。その名前には作り手と買い手、使い手、たくさんの人の手が食器を通して『輪(まる)』のように繋がって欲しいという願いが込められています。
「てまる」の器の特徴として、器の縁の返しをつける、スプーンの持ち手の太さを調節する、片手でもしっかり口元まで運べるよう指掛りとなるくぼみをつける。シンプルなデザインの中にこのようなほんの小さな工夫を入れることにより「てまる」の食器がより一層食卓に映え、作り手と使い手を結んでいくのです。
また、「てまる」では使いやすさは基より食器の美しさにもこだわります。普段、私たちが何気なく使っている食器は様々な種類がありますが、福祉の世界では「使いやすさ」「食べやすさ」に重点が置かれているため、好きなデザインの食器を選ぶことは難しいのです。「料理と食器は切っても切り離せない関係にあると思います」そう語る大沢さんには、家族や友人と同じ食器を使って楽しい時間を過ごして欲しいという強い思いがありました。この思いが、現在全国に新しい風を吹き込んでいます。