滝沢市巣子の閑静な住宅街に作業場を持つ小林椅子工業。昭和44年に盛岡市内にて「小林椅子店」として創業し、昭和49年に巣子へ拠点を移したといいます。代表取締役社長の小林正一さんは、この道40年以上になるベテランの椅子職人です。
これまで、列車のシートの張り替えや、船舶の内張りの仕上げ作業などに携わってきたという小林さん。現在、小林さんを含めた5名の従業員で、椅子の製造や修理、シートの張り替えなどを精力的にこなしています。
椅子を知り尽くした小林さんが開発した商品が『座・らくーん』と『多目的クッション』。どちらの商品もお尻や太ももの負担を軽減し、長時間椅子を使用する方に快適な座り心地を提供するために制作されたクッションです。
先に開発された『座・らくーん』が生まれたのは、小林さんの奥様が入院された事がきっかけだったといいます。入院された奥様と同室の患者さんと親しくなって間もない頃、その患者さんが車椅子に乗った時の姿勢があまりにも良くない事に気が付きました。
そこで、お尻の収まりが良いように計算して穴をあけたベニヤ板を用意し、その板にスポンジとシートを張ってクッションを制作しました。これが『座・らくーん』の原型となったと小林さんは話します。
このクッションを患者さんにプレゼントしたところ、「体の重心がまっすぐになりバランスが良くなった」と大変喜ばれたそうです。その後、素材や板の厚さに改良を加え、お尻や太ももへの負担を軽減し、取り外しが可能な現在の形になりました。平成20年には、岩手県発明協会主催の「岩手県発明くふう展」で優良賞を受賞し、特許も取得した商品です。
この『座・らくーん』を改良版として制作されたのが『多目的クッション』。中央部には溝が走り、太ももを左右両側から支えることで、座った際の肛門付近への負担を軽減することができます。痔でお悩みの方や、長距離ドライバー、お産後の女性に役立てられるよう開発されました。